■ プロフィール

Author: ねこ 
猫愛妻家。
持ち物全てを猫(黒猫だと尚いい)で染めようと密かに目論んでいる。

小咄は明るいモノよりも暗いモノを好みます。
一人称で意味不明な文をつらつら書く傾向が多々みられます。
でも心の奥深くではオールジャンルに対応できる人間になりたいと密かに思っております。

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それじゃあ幸せになれないね



最終更新から久しぶりの更新です。
ひとつお題戻ってます。んでもってコチラも多分継続。

本日のお題

    独白5題+台詞5題

「それじゃあ幸せになれないね」


いつだったか、誰かが俺に「幸せですか?」と言った。
当時の俺はまだ、両手で歳を数えられる程の年頃だった所為か言われた言葉の意味がよく分からなかった。

それにその頃は、近くの森や林で会う動物たちと会話することが楽しく思えたし、使用人とかって言う奴と遊ぶことが楽しかった。
これが幸せと言うことなのかと尋ねたら、使用人は優しく微笑んで頷いていたから信じて疑わなかった。
けれど、今幸せなのかと問われればはっきりと肯定することは難しいのだと思う。
だからと言って、幼い頃の時間が幸せではなかったと否定することも正しいことではないのだと思う。


俺は整わない呼吸を正すように、深く吸い込んだ酸素をゆっくりと吐き出した。
顔を上げた先に映る、揺らめくオレンジ色の炎に少し顔を歪めて目を伏せた。
自分が居る場所からは遠くの方に見える炎の音が間近で聞こえる気がして、あまり気分がよくなかったからだ。

今考えると、これが本当に正しい選択だったのかは分からないが、間違っているとも思えない。
ただ、今まで自分の内にあったものを全て裏切ったということは確かであると言えた。
俺は、親も友人も地位も財産も、全て捨て去ったのだ。遠くで天へと上がる炎と共に。

捨てると言えばあまり罪悪感は沸かないが、裏切ると表現すれば自分のしたことが膨張する。
全て自分が決断したことだと言うのに、体の奥で何かが引っかかっているモノが同じことを考えさせる。

「ラスティル様」

俺の名前を呼ぶ声が後方から聞こえて、ピクリと体が上下に動いた。
だが、ゆっくりと後ろを振り返ると、見知った人間が自分を呼んだのだと分かり安堵の息が漏れた。
やはり俺は、自分がしたことに対して少なからず罪悪感を抱いていることが分かった。

「……フレインか。驚かせるなよ、心臓に悪い」

俺が罰の悪そうな顔をすると、フレインは小さく笑ってから手に持ったカーディガンを俺の方に掛けた。
掛けられたカーディガンの端を手繰り寄せるのを見た後、奴は俺の隣に腰を下ろした。
ゆらりと頬を掠める風に、少し肌寒く感じて摩擦を起こすように両手を数回擦り合わせた。
それを見てみぬ振りするフレインは、本当に俺の使用人なのかと疑いたくなる。
だが俺の意思に同意してここまでついてくるのだから、やはり俺の使用人なのだとも思う。
そんな彼にだからこそ、未だはっきりとしない疑問をぶつけてみることにした。

「なぁ、俺がやったことって間違ってると思うか」

衣類に首を埋めてフレインの顔を見上げたが、返答はなかった。
それは肯定していると受け取っていいのかと尋ねそうになったところで、奴の薄い唇が開いた。

「間違っているにしても、そうでないにしても、あそこに居る限りあの言葉の意味の真意が分からないからそうしたのでしょう?」

薄っすらと開かれた目に、あぁとだけ答えておいた。
フレインの肩越しに見えた炎と過去の記憶の中に残る誰かの言葉が脳裏をチラついてしまい、俺は静かに目を伏せた。














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